らせん

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らせん

悲愴にまみれた物語しか紡ぎ出せない両腕ならば、いっそ纏った深紅共々切り落としてしまえば良い。 薄い感情の上に造り出された言葉の末路は想像に難くなく、だからこそ安易なそれは簡単には破れ去りはしないだろう。 虚偽と知りながら真実に変える妄念に固執する君は、ねぇ、どんなイマなら君はマコトを現にしてくれた? 現実に写り込むのは腐敗し地下に堕ちた虚栄で、それを見る君もまた地下への道を辿るのは必然。 目下階下への道を目指し忙しなく足を動かす君の背を僕はただ見つめることしか出来なくて、追い掛ける事もまして声を掛ける事すら出来ずに…否、せずに居た。 手を伸ばせば届く位置に君は居て、声を掛ければ耳を貸せる位置に君は居て、それでも何もしない僕を君は胸中で恨んだのだろうか。 例え恨まれて居たとしてもそれは致し方ない事だし特に何も感じる事は無いが、君が僕を恨む事で少しでも何かプラスが生じるならばそれはそれで構わない。 結局悲劇しか紡ぎ出すことの出来なかった片腕を逆のカイナに抱いて、未練の証に残された片腕と共に僕は生きよう。
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