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空気が変わる。いやに冷たい。外の温度とは、明らかに違っていた。
不意に内部に、閃光が走る。「ひゃあ!」と、情けない声を上げながら、急いで振り返る。
なんと、奴らは既に撮り始めていた。カメラのフラッシュが、闇を照らす。
そんな中、ふと見たあの女の子は、ある一点を、ぼーっと見つめたまま、硬直していた。
それは確か、最初に彼女が指差した、窓の方向だった。
それに、さっきから体がおかしい。寒いはずなのに、やけに汗が出る。嫌な、汗が。
続いて入ってきたのは、男グループの中でも、比較的無口だった人。
よく見ると、それなりに整った顔立ちをしており、何より、縁なし眼鏡が、よく似合っていた。
彼は、私と目が合うと、気の毒そうにする。多分、彼は気づいているんだろう。あの女の子の様子に。
だからきっと、私も同じ心境だと思って……。
「ちょっとー、何止まってんのー? 早く行ってくんなーい?」
変に間延びした声が、廃墟をこだまする。もうすっかりはじけている、あの女だ。
そもそも、彼女が行くとか言わなければ、こんな所になんて、絶対来なかった。
私は、少なからずとも、彼女に憤りを感じていた。殺したいくらいに。
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