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一階の探索を終え、自然な成り行きで、二階に上がる事になった。
今思えば、ここに来て私は、一枚も写真を撮っていなかった。
当たり前だ。
せっかく撮った、昼間の楽しい、美しい光景も、こんな所で台無しにしたくなかったから。
相変わらず、先頭を進む私。階段を登りきった先に、廊下が広がる。
学校の廊下にも、見て取れるそこには、窓が断続的に並んでいた。
そこからは月が見えた。
綺麗な満月。この廃墟に来ている事を、一瞬忘れさせてくれた。
しかし、後ろの怒声が、私を現実に引き戻す。
そんなに先を急ぎたいなら、自分が前に行けばいいのに。
決して声には出さず、黙って廊下を進む。
「きゃあ!」
悲鳴。
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