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「カズくんが顔に出やすいタイプなだけ。私は何もしてない」
「だからカズくんって呼ぶのやめろよ!!俺が子供みたいじゃんか!」
「あら、実際子供じゃない。貴方」
「お前も同い年だろうが───────!!」
……とまあこんなふうに、俺より二枚も三枚も上手の奴だ。
言い合いでは滅多に勝てない。
いつかこいつを完膚なきまでに圧倒し、見下してやるのが俺の小さな夢だったりする。
夢で終わりそうだが。
そんな俺たちのやり取りを見かねたのか、はたまた完全に取り残されたことへの不満なのか。浩樹が先を急がしてきた。
「オイ、そろそろ行かないとマジで遅刻すんぞ。急ごうぜ」
時計を見ると、登校時刻まで残り5分を切っていた。
やっば!マジでマズイじゃん。
「走るぞぉ────!!」
次の瞬間俺は叫び、全力で走り出した。
それを見た3人もあわてて駆け出す。そして口々に文句をいい始めた。
「ちょっと和成!遅れて来たくせになんで仕切ってんの!!」
「んなもん関係あるか!つべこべ言わずについてこい!!」
こうして俺たちは騒ぎながら走り、校門が閉まる直前にギリギリで滑り込んだのだった。
「はぁ、はぁ……走ったぁ~」
「だらしねぇなぁお前ら」
「まったくね」
俺と夏美はぜえぜえと息を切らしているが、浩樹は軽く息を乱す程度だった。
里菜に至っては、汗すらかいていない。流石というかなんというか……。
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