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彼女はとても優しくて、いつでも僕を安心させてくれた。
僕の欲しいときに彼女は傍に居てくれて、彼女は僕に何も要求したり、普通の恋人なら絶対に言うワガママも彼女は絶対に言わなかった。
彼女は変わることはなかったけど、僕は違った。
まだ高校生で彼女との関係も世間では決して許されていない、外で彼女と会うことも出来ないはずだった。
でも、僕は彼女を四六時中求めるようになった。
つまり、何時でも何処でも彼女から離れたくなくなってしまった。
今までは自分の部屋の中で愛を育むだけで良かったのに、今ではそれだけじゃ満足できない体になってしまったのだ。
欲しい時に彼女がいないと何故か落ち着かなくなり、イライラした。
ある時、友人が休憩時間にソワソワと出ていくのを見つけて付いていった。
「内緒だぞ。」
友人はそう言って体育館の裏側へ僕を案内した。
友人は何も言わず友人の彼女を僕に貸してくれた。
友人の彼女は赤い服が印象的だった。
こうして大人の目を盗んで彼女と関係を紡ぐ快感を知ってしまった。
僕は次の日から常に彼女と行動を共にした。
結局のところ僕はこういった事を器用にやってのける才能のようなものがあったのか、彼女と出会ってから大人に一度も見つかっていない。
唯一見つかったのは両親だけだ。
見つかったというよりも、僕が両親に打ち明けたと言うべきだろうか。
「外ではやめろ。」
父は冷たく言っただけで、怒ったり悲しんだりはしなかった。
母は少し顔に影を落としたあと
「火の始末には気を付けるのよ。」
と言った。
その時の母の不安そうな顔を見て、彼女との事のために父や母に迷惑はかけたくない、と思った。
それからは人目につく可能性があるところでは彼女と会わないことに決めた。
あと三年もすれば何時でも何処でも彼女と愛を育むことができるのだから。
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