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三年が過ぎるのはあっと言う間だった。
あれからすぐに進路について悩み、就職することに決めて、卒業式があり、少し土地の離れたとこへ就職し、学生時代付き合っていた人間の彼女との弱遠距離恋愛も続かず、そんなゴタゴタしている中で研修期間も終わり、ようやく一人前の社会人になった頃に二十歳の誕生日がやって来た。
こんな忙しい日々を乗り越えてこれたのも全て彼女のお陰だった。
いつもそばで支えてくれた、彼女の優しさに救われてきた。
さぁ、明日から何時でも何処でも彼女に会える。
と思ったのもつかの間、最近は路上での関係は禁止され、飲食店でも区別され、あまつさえ決められた場所でしか彼女に会うことは許されないと言う。
これでは学生時代の肩身の狭い頃と何ら変わらないじゃないか。
僕は珍しく憤りを感じた。
何故なら今では大人が彼女と関係を持つ事も悪く言われはじめたのだ。
その切っ掛けとなったのは医者の無責任な発言からだった。
「肺癌になって死ぬ確率が上がる。」
そう言ったのだ。
それを聞いて彼女を投げ出した者達もいることだろう。投げ出さずとも悩んだ者達もいるだろう。
僕は後者だった。
「死ぬ。」
と言われたのだ。
誰だって怖い。
でも、僕には彼女を投げ出すことができなかった。
彼女は何処よりも居心地のよい、僕にとっての居場所であり大切な恋人だったからだ。
自転車に乗って出勤するときも、会社について一息つくときも、昼食をとった後も、一日の仕事終わりにも、自転車に乗って帰宅するときにも 、夕飯の後、寝る前にも……………
何時でも傍に居てくれた。
僕の求めるときに、何時でも居てくれた。
彼女がいるから僕がいるのかもしれない、そんな幻想を抱くようにもなっていた。
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