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それから何年かが過ぎただろうか、会社でも立派に仕事をこなし、気立てのいい人間の彼女とも順調に進んでいた。
しかし、朗報は稲妻のようにやって来た。
この僕が父親になると言うのだ。
嬉しかった、本当に嬉しかった。
自分のような男を選んでくれた事が嬉しかったし、父親になれることが嬉しかった。
それからというもの、会社では重要な役を任されるようになり、そのお陰で給料も増えた。
人間の彼女とは同棲するようになった。
日に日に大きくなっていくお腹に夢は膨らんだ。
そんな夢のような日々でも僕は彼女との関係は切らなかった。
後ろめたい気持ちなんて一つもなかった。
第一人間の彼女の前では絶対に吸わないようにしていた。
胎児に良くないからだ。
それだけ気を遣っていたのに、人間の彼女は僕に言った。
「この機会にやめよう。」
彼女と別れろと言ったのだ。
僕は悲しくなった。
付き合っているときは何も言わず許してくれていたのに、いきなりあんなこと言うなんて………
悲しくて悔しくて、未来の妻を残し一人立ち上がり、ベランダへ出た。
秋の風は肌当たりが冷たかったけど暑くも寒くもなく、心地いいと思えた。
そして彼女の細くて白い体に唇を付けた。
その瞬間押さえていた気持ちが溢れだし、涙という形で現れた。
「なんで泣いてるんだろう。」
自分でもおかしくなった。
しかし、止めどなく流れる涙は頬を濡らし、口にくわえた彼女を濡らした。
その時だった。
目の前を眩しい光が覆った。
その光に目が慣れてきた。目の前に人が立っていた。
「君は?」
見覚えがあるような無いような、何処かで会ったような気もするし、毎日顔を会わせていた気もする。
その女性は白地に黒色の星をちりばめたドレスを着ていてとても美しかった。
良く見ると黒色の星に混じって金色の星が七つあるのに気づいた。
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