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「君は?もしかして……………」
「そうです、今まであなたとずっと一緒にいました。」
ゆらゆらと揺れる煙のように儚げな声で彼女は言った。
「もうお別れです。」
目を丸くしてただ驚いているだけの僕に彼女は言った。
「そんないやだ。」
彼女の言葉の意味がわかった僕はただ言った。
「私といるとあなたは死ぬわ、死ななくてもあなたの体は確実に蝕まれていくのよ。」
「うそだ。」
「本当よ、私といるとあなたの肺には小さな穴が空いて気管支炎を誘発させるの。」
「それが何だって言うんだ。」
「それだけじゃないわ、気管支炎が悪化して肺気腫になると肺は固く縮まらなくなります。血管にはコレステロールが溜まり動脈硬化や動脈瘤を起こすかもしれません。そうなればあなたの体はまともに生きていけなくなります。それに私がいるだけであなたの体には14mgものタールが流れ込んでしまうのです。」
「そうと決まった訳じゃないだろう。」
「これは決まった事なのです。良き妻を迎え、子供を授かった今、あなたは自分の命の重さを知らなくてはなりません。」
僕はその真実を受け入れられなかった。
だって悔しいじゃないか、医者の無責任な発言だと思っていたのに事実だったなんて…………
「あなたの体はあなただけの物ではないのです。今から生まれてくるあなたの子供、奥さん、御両親、あなたを信頼ている人全ての人の物なのです。私の物でもあります。」
「君の?」
「えぇ、長い間一緒に居たんですもの、愛してくださったでしょう?私も愛してました。そんなあなたを私のせいで死なせたくはないのです。」
「君のせい?」
僕は次々に溢れてくる涙と思い出たちに戸惑っていたけど、この感じは………
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