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三回。
この少女を捕まえる事に成功するまでに、ボクが死亡(正確には死んでいないのだが適切な言葉が見つからない為、便宜的に死亡と表現する)した回数。
訳あってボクは普通の人より、ちょっと死ににくい。
詳しい事は「ひかるシェンウー」みたいなサブタイトルで、吸血鬼の男子高校生の一人称によって語られるだろう。
まぁ、嘘だけど。
というのも嘘だけど。
……すべて戯言だ。
「はぁ…はぁ…… いや、強いね、キミ」
「テメェこそ…やるじゃねえか…… つうか、なんで死なねえんだよ」
「色々、あってね」
「ちっ、あーあー、すっかり興が削がれちまった。今日はもういいや」
そう言うと彼女は、その手に持っていた包丁を投げ捨てた。
そこには、なんの執着も無かった。
「……ルーシーさんになんて言おう」
「!?」
なんだ? 印象がいきなり変わった。
今までの肌を突き刺すような殺意も感じられない。
まるで、別人のようだ。
「……あの」
「あっ、なにかな?」
「……これ、ほどいてはくれませんか?」
「あ、えぇと、その前にいくつか良いかな?」
「……?」
「キミは、キミの名前は斬島切彦で合ってるよね?」
「……はい、そうですけど」
「さっきまでボクと戦ってた」
「……はい。お兄さん、お強いです。あの三人とは違います」
「そうだ!! それについて詳しく聞かせてくれないかな、えーと、斬島――」
「ぷりーずこーるみーキリヒコ」
メチャクチャ棒読みな英語だ。
というか、キャラ変わりすぎなんですけど……
「わかった。じゃあ、切彦ちゃん」
「……切彦、ちゃん?」
「うん。いや、今呼べって言ったから」
「……かわいい」
「あ、嫌だった?」
「……そんなふうに呼ばれるの、初めてです」
「そ、そっか。じゃあ、この呼び方のままで平気?」
「……はい、ありがとうございます」
お礼を言われるようなことはしてないと思うんだけど、まぁいっか。
「……えーと、それで、なんでしたっけ?」
「あぁうん、今キミが言ってた三人組について教えてほしいんだけど、その前に――」
「……?」
「よいしょっ、と。はい、立てる?」
「……あ、」
「あー、ゴメン。強く縛りすぎたかな」
「……いえ、そうじゃなくて。少し驚いただけです」
「驚いた?」
「……はい。ついさっきまで戦っていた、それこそ殺そうとしてたのに――」
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