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ボクはそのカフェとやらがどこにあるのか分からない。切彦ちゃんも同様のようだったらしく、電話で道を聞きながら進んでいる。
国道沿いの大通りから商店街のアーケード通りに入り、通り抜けて住宅街との境界付近に近付いて行くと――
「……ここみたいです」
――繁華街から住宅街に切り替わりそうな場所で、切彦ちゃんの足が止まった。
「喫茶店?」
目の前にあるのは、どこからどう見ても喫茶店だった。それも全国展開しているチェーン店ではなく、個人経営の小さな――それでも戸建て――喫茶店だ。
店の名前は、英語表記で『Pea berry』と書かれている。その意味を、コーヒー党のボクは良く知っている。
普通はコーヒーの実に二粒の平豆が入っているのだが、稀に丸豆が一粒しか入ってないものもあり、それをピーベリーと呼ぶ。
ピーベリーは希少性が高い豆なので、コーヒー好きなら有名な話である。だから、探せば全国に同じ名前の喫茶店はそれなりにあるだろうね。ここも、店の名前でコーヒーにこだわりがある喫茶店と主張したいようだ。
「……どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ。それじゃあ、入ろうか」
「……はい」
ボクと切彦ちゃんが喫茶店に足を踏み入れた――途端。
「今日は随分と妙な客が来る日だ」
いらっしゃいませも何もなく、客商売にしてはずいぶんと突き放すような声が飛んできた。切彦ちゃんの肩越しに店内を覗き見れば、カウンター席から覗ける厨房で、エプロン姿の男の人がなんとも言えないような眼差しをこちらへ向けている。
「君たち、あそこの三人の知り合いだよね?」
そう言って、その人が指した方を見ると――
「へぇー! あの人って《斬島》の人間だったんだ!?」
「しかも『切彦』ときたもんだ。俺も一度戦ってみてぇな。ぎゃははははは」
「いやいや、私としてはその相手をされたという方に興味がありますよ。まさか、あの『射堂断罪囚』の総隊長さんだとは」
――ものすごくテンションが高い三人組が、ボクと切彦ちゃんの話題で盛り上がっていた。
なにやってんだか、あの人たちは……
「あー、確かに知り合いです。騒がしくてすいません、すぐに黙らせますので」
「……ごめんなさい」
二人で頭を下げて、出夢さん達がいる席へ向かう。
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