罪状.壱‐肆

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「えぇ、良いですよ。答えられる範囲でなら」 「ありがとうございます。では早速、まず聞きたいのは、貴方たちがこの街へやって来た理由です」 「ボクも出夢さんも、とある依頼でこの街に来ました」 「依頼というのは?」 「守秘義務があるので詳しくは話せませんが、ある双子の兄妹を殺せというものです」 「双子の兄妹? それは黛玻璃くんと黛瑠璃さんのことでは?」  ビンゴ!! やっぱり知っていた。 「えぇ、確かにそうですけど…… なぜ貴女がそれを?」 「実は私たち悪宇商会も黛兄妹に関する依頼を受けているんですよ」 「それは本当ですか?」 「えぇ、厳密に言うと黛兄妹の父親、なんですけどね」 「父親? どういうことです?」 「あれ、知りませんでしたか? あの二人の父親、国会議員の黛金剛ですよ」  これは意外。  だけど、依頼を持ってきた時のあの人の態度はこれで説明がつく。  なぜ一国の首相が、「こんな田舎街の不良中学生を?」と思ったが、ようやく納得できた。 「なんだかきな臭くありませんか」 「奇遇ですね。ボクもそう思ってたところです。今回の一件については不自然な点がある」 「でも、それは一旦置いておいて、まずはお互いの聞きたいことを全部話してからにしましょう」 「そうですね。ではこちらからからもいくつか。 まず一つ、これは切彦ちゃんに関してなんですが、戦闘時と今とだいぶ印象が違うのですが……」 「それなら、実際に見てみてもらった方が早いですね。切彦くん」 「……ぇ?」  そう言うと、ルーシーさんは持っていたペーパーナイフを切彦ちゃんに投げ渡した。 「ちっ、危ねーじゃねえか。いきなり何すんだよ、ルーシー」  ナイフを手に持った瞬間、切彦ちゃんの印象ががらりと変わる。 「いいじゃないですか。百聞は一見にしかずですよ」 「あー、まぁこういうことだ。ご覧の通り、俺は刃物を持つと性格が変わる」 「なるほど。だからあの時も……」 「はぁん、そういうことだったのか。随分と難儀な性格だな」 「ねぇねぇ。それって二重人格とは違うの?」  三者三様の反応を見せるボクたち。  確かにあの時は包丁を投げ捨てていたもんな。 「あぁ、別にそういうのとは違う。どちらも同じく俺だよ」
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