罪状.壱‐陸

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「えーっと……ここで良いのかな?」 「……はい、ここで合ってます」  喫茶店を後にしたボクと切彦ちゃんは、黛兄妹が通っている中学校の正門前に立っていた。 「慌てて来たけど、少し早かったみたいだね」 「……そうですね。まだ授業やってます」 「んー、このまま何もしないで待ってるのもアレだし、なんか話してようか」 「……はい」 「じゃあ、改めて自己紹介から。ボクは射堂光、射堂断罪囚の総隊長。実はまだ父さんの役目なんだけどね、『今のお前になら充分任せられる』って言って半ば強制的にさせられたという訳。本当のところは『面倒くさいから』とかだろうけどね。今もどこほっつき歩いているのやら」 「……大変なんですね」 「あはは、言うほどじゃないよ。これはこれで楽しいし――って表現としては語弊が生まれそうかな」 「……たしかに、この世界だと」  そう言うと同時に微かに笑みを浮かべる切彦ちゃん。  うん、不意打ちは反則だ。 「じゃあ、次は切彦ちゃん」 「……はい。まいねーむいず切彦。あいむひっとまん。悪宇商会所属の《斬島》第六十六代目切彦です」 「六十六代目ねぇ。約半数が断絶、廃業している裏十三家で、そこまで続いているとは……。他家で未だ現役なのは《星噛》に《崩月》、あとは《堕花》や《円堂》くらいじゃない?」 「……えっと、ごめんなさい。あまり気にしたことがないので」 「いやいや、謝るほどのことじゃないから気にしないで。うーん……仕事柄、崩月や円堂とは多少交流があるけど他はなぁ」  そんな他愛もない会話を楽しんでいると、お馴染みの授業の終わりを告げる音が校舎から聞こえてきた。 「……授業、終わったみたいです」 「ってことは、そろそろ出てくるか。部活動には入ってないみたいだし」  この学校の一番の特徴は、校内に出入りすることの出来る入り口が一つしか無いことだ。ボクたちの目の前にある門がそれだ。  だから、この門の前で待っていれば必然的に黛兄妹に出会えるという訳だ。 「……あの、お兄さんは二人の顔わかりますか?」 「妹の瑠璃ちゃんのなら。兄の玻璃くんは声しか分からないや」 「……そうなんですか。私、どちらも分からなくて……。大丈夫でしょうか?」 「あぁ、それなら安心して。向こうも素人じゃないんだ。どれだけ自然に一般人に紛れこんでいても、それがプレイヤーであるならボクは見逃さないよ」
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