罪状.壱‐陸

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「ありがとう。では、お望み通り手短に。「今までのボクらの衝突はすべて仕組まれたことだった。争う理由なんて無かったんだ」 「ですから、それを信じろと?」 「そうしてくれるとありがたい」 「何を根拠にそんな事が言えるのですか?」 「すべてだよ」 「すべて?」 「そう。射堂断罪囚と匂宮雑技団、悪宇商会が受けた依頼。『黛玻璃、黛瑠璃両名の殺害』という依頼内容。そして、それを依頼した依頼人。今回の衝突の発端となった事柄すべてが根拠だ」 「それがどうかしたんですか? オレたちだって、決して良いことをしてきた訳ではないですからね。それくらいの覚悟はありますよ。ただ、三つもの組織に殺害依頼が出されるとは思っていませんでしたけどね」 「その依頼を出したのがすべて同一人物だとしたら?」 「多少違和感はありますが、万全を期す為にと考えれば納得できる範囲かと。一つの組織に依頼するよりも、三つの組織に依頼してそれだけ殺せる確率は上がるでしょう? まぁ、それにはそれぞれの組織に事情を話して連携を取ってもらわなければ意味がないでしょうけど」 「なら、その連携が取られてなかったとしたら?」 「それは組織間の問題でしょう。同じ暗部組織でもそれぞれ毛色が違うでしょうし、商売敵でもある。連携を拒んだとしても不思議ではありません」 「ふむ、言い方が悪かったな。違うんだ、そうじゃないんだよ。連携を取る取らないの段階ですら無いんだ。そもそもボクたち三つの組織はお互いがなぜこの街にいるのか知らなかったんだよ。「君たちとあの山で一戦交えた時、ボクと出夢さんは出会ったばかりだった。そこで初めて射堂と匂宮に同じ依頼が出されていたことを知ったんだ」 「そんな馬鹿な。それでは三つの組織に依頼する意味が無い。それぞれに事情を話しておけば、連携は取られなくても現場でいざこざが起きることは無いのに…… それさえもしてないだなんて」 「匂宮から来たのが出夢さんで良かったよ。他の人が来てたらその場で殺し合いになってただろうし、その後も切彦ちゃんと本当に殺し合う羽目になってた」 「切彦ちゃんとは?」 「悪宇商会所属のプレイヤーだよ。丁度良いから紹介しよう。切彦ちゃん、自己紹介を――って、あれ? いない……」 「そういえば瑠璃もいないような……」  その瞬間、嫌な予感が背筋を走る。  玻璃くんも同じだったらしく、思わず顔を見合わせる。
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