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「玻璃くんっ!!」
「射堂さんっ!!」
一呼吸おいて同時に駆け出す。
まずは人命を優先。
なにがあったかわからない。だからこそなにがあったか突き止めなくては。
「今すぐに信じろとは言わない。だが、とりあえずは二人の安否の確認だ。切彦ちゃんと瑠璃ちゃんを見つけだすまでは協力しようじゃないか」
「了解です。それで、手分けして探しますか? それとも一緒に……」
「手分けして探そう。ボクはまだこの街の地理に詳しくない、それらしい所が分かっている玻璃くんが個人で動いた方が効率的だ」
「わかりました。では……」
「あぁ、気をつけて」
玻璃くんが走って行ったのと同時に、ボクは携帯を取り出しルーシーさんに連絡しようとする。
その時、目の端に映っていた玻璃くんが突然ずっこけた。
うん? ずっこけた?
あ、ふらつきながらも立ち上がった。
こっち来た。
「あの、えと、とにかくこっちへ!!」
「あう。ちょ、待っ、おぉぉぉぉぉぉ」
訳も分からぬまま腕を引っ張られたボクは、近くの広場のような場所の前まで連れて行かれる。
「ちょっとちょっと、いきなりどうしたの?」
「あれ、見てください」
「ん?」
広場内を指差す玻璃くん。
言われるがままそちらを覗き込むと――
「うわっ、すっごーい!! ホントに何でも切れるんだぁ。 じゃ、次これ切ってみてよ!!」
「ちっ………………………ほらよ」
「おぉー、次はこれ!! そん次はこれね!!」
――瑠璃ちゃんと切彦ちゃんが仲睦まじく(?)戯れていました。
「ったく、あの馬鹿……」
「あはは、はは……」
もうね、笑うしかないよね。
あんな話をしていた直後だったんだ。ボクと玻璃くんがどれだけ焦ったか。
「何やってんだ、瑠璃!!!!!」
「ひいっ!! は、玻璃くん? なんでそんな怒ってんの?」
「いきなりいなくなるな! どれだけ心配したと思ってるんだ!!」
「うー、だってー」
「だってじゃない! 射堂さんにだって迷惑かけたんだぞ!」
瑠璃ちゃんに駆け寄り、お説教を始める玻璃くん。
なんだかデジャヴュが…… あっ、今朝の出夢さんと理澄ちゃんか。
どこの兄妹も変わらないんだなぁ。
「おい、あのハイテンションに付き合わされた俺に何か労いの言葉はねーのかよ、おにーさん」
「やぁ、切彦ちゃん。ボクには随分楽しそうに見えたけどな?」
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