あの月……

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外に出るとそこはまるで別世界だった。……いや、こちらが本来あるべき世界、姿なのかもしれない。 そこで居眠りができるほどの暖かな空気と、活字が読めるくらいの明かりに照らされたさっきまでの世界とは違い、よく目を凝らしても難しい字は読めないほどかすかな明かりの世界。 間違っても居眠りなどしたくない冷ややかな空気が俺の体にぶつかっては、腹いせとばかりに熱を奪っていく……。 これもまた、つくられた明かりを浴びてボールを打ち合う学生たち。 時折ラケットから逃れた黄色い球がフェンスにぶつかり、ガシャーンと音を立てて飛び跳ねる。さながら、かけっこで一番に壁をタッチし、飛び跳ねて喜ぶ子どものようにも思える。 楽しげに笑いあう学生たちを横目に俺は自分の自転車を探す。 こんなとき、なにをやっても中途半端に終わってしまう俺にとっては、部活やサークルに精を出しては喜び、楽しみあうみんなを見て羨ましくも、疎ましく思ってしまう。……本当に素直じゃないと思う。 いつものようにポケットから自転車の鍵を取り出すと、いつものように壊れかけたマカロンのストラップを振り回す。そしていつものようにシルバーの自転車を見つけては慣れた手つきで鍵を開ける。 またいつものように一日が終わっていくのかと思うと今日一日を振り返る。今日は充実したーって思えた日はいったいどれほどあっただろうか……。やったことを書き出してみると、なんだ……ルーズリーフ一枚もいきやしない。 こんなことを思うと、今でもどんどん命が消えていっているというのが、まるでテレビか絵空事のようにさえ勘違いしてしまう。 ……俺もまた自分勝手な生き物なんだろうな。
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