あの月……

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自転車のライトをつけたことで大げさな音をたてるタイヤを、パンクさせないように俺は段差の少ない道を走る。なんでこうも自転車はパンクしやすいのだろうか。小さな段差にすら耐えられないのか。 歩いたり走ったりしていると何でもないような段差でも、自転車に乗るとびっくりするぐらいの衝撃に感じる。 このことを人生に置き換えてみてもおもしろいかもしれないがやめておく。 そんなことを考える余裕を与えてくれないほど、自分の横スレスレを車が通り過ぎていく。自転車は車道を走らないといけないんだぞ? くそまじめに生きるとこうも居心地の悪い世の中なのか。段差を避けるために少しでも車道に出ればひかれてしまう。 段差の少ない道を走っている自分にとっては何とも皮肉な話だ。 このことを人生に置き換えてみるとおもしろいかもしれないが、やめておく。 気をつけてブレーキを握らないと、どこぞのSF映画のように自転車ごと空を飛んでしまいそうな急な坂道にさしかかったからだ。 風になびき、ぐらぐらと左右に揺れるハンドルを必死に握りしめバランスをとる。 このことを人生に例えてえみてもおもしろいかもしれないが、やめておく。 相変わらずスレスレを駆け抜けていく車と、左折のため横につめている車が目の前に見えたからだ。 俺はゆっくりと段差を乗り越え歩道に乗り、律儀に横に整列した車より頭一つ分先で信号が変わるのを待つ。 こんな時俺は思う。スタートは同じなのに信号が変わり、走り出すと差ができてしまう。 このことを人生に…………信号が赤から青に変わった。
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