運が悪かった?

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中は入ってすぐ店舗になっていて、奥に床を高くして畳の座敷があり、昔の典型的な駄菓子屋さんのような造りです。 空気が埃っぽくて、商品棚には売れなさそうな商品が多数陳列されていました。 私が怯えながら見回している間に、おばさんはさっと奥の高座敷に上がり、「あの奥の右側にある部屋がお風呂場だから。好きに使ってね。私さっきの片付けに行くわね。終わったらまた来るから」と早口で言ってタオル等を畳の上に置くと、また慌ただしくサンダルをひっかけて行ってしまいました。 取り残された私は、あの老人がいないのか確認しようと座敷をのぞきこみました。 その時、後ろからあの老人が現れ、私を追い抜くように素通りして座敷に上がろうとしていました。 ほんの数秒前におばさんが通って行ったはずの、誰もいなかったはずの背後から突然現れたのです。 予想だにしなかった登場に私は腰を抜かして、そのまま崩れるように座敷に腰を下ろしてしまいました。 私が老人を見上げる形で声を失って固まっていると、「すまんねぇ。ちょっと出てたものだから。風呂に入りたいんだって? どうぞ。使いなさい」と、優しい口調で言われました。 老人はそのまま座敷にあぐらをかいて座り、ちゃぶ台で何か作業をし始めました。 私は少し呆然としていましたが、自分がすごい取り越し苦労をしていたことに気付き、あわてて靴を脱ぐと「失礼します」と言って座敷に上がりました。 まだ心臓はバクバク、足はガクガクしていたけど、老人に気付かれては失礼だと思い、できるだけ平静を装って、「じゃあ、お風呂お借りします」と一礼しました。 その言葉に老人はニッコリ微笑んで「ゆっくり入るといいよ」と言ってくれました。
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