『クリス・バートラーの最期』

運が悪かった？

店内の壁には、入り口とレジ台がある面を除いてぐるっとコの字形にガラスの飾り棚が二段設置してあって、そこには古い花瓶だとか、急須だとか、中には昔の小判のようなものまでありました。
老人に無視されるので、仕方なく店舗内をウロウロしてみたのです。

店舗入って左の突き当たりの壁には、主にガラス製品が並べられていました。
薩摩切子らしきペアグラスに目が止まり、手に取ろうとした時、下の段にある物を見つけたのです。

それは、本のようでした。
でもちょっと変わっていて、表紙・裏表紙はタイルのような正方形の陶器で出来ていました。
左端に２つ穴が空いていて、そこに紐を通して綴るタイプの、よく学校の先生が出席簿などで使っているファイルと同じです。
色はエナメルのような光沢のある黒で、真ん中に黄色い普通の明朝体で『クリス・バートラーの最期』と書かれていました。