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スッ
蝋燭の明かりのみが灯る部屋に、身体を黒で包んだ一人の男が何処からとなく現れる。
「ご報告があります」
「チッ、くだらねェことじゃないだろうな
こちとら報告書のせいで寝る暇もねェ」
「浪士を斬り捨てた奴を目撃しました」
その言葉を聞き、今まで机と向かっていた男は初めてこちらを振り返った。
「……――それだけか?
天才監察ともあろうお前が、そんなことだけを報告するとは思えねェけどな」
「浪士3人を相手に一寸も狂うことなく急所を一撃で仕留めたんです
しかも……――俺の気配に気づいた」
男は眉間に皺を寄せ、静かに口を開く。
「そいつァ何者だ?」
「わかりません、今日初めて見た顔です
しかし、京には今までいませんでした
多分最近、京に来たことと思います」
よそ者…か……
ただの流れ者だといいんだがな
しかし何もないっていう証拠がない以上、ほっとく訳にもいかねェな
「山崎、調べ次第また報告しろ」
「御意」
シュッ
黒で身を包んだ男はそれだけ言うと、音もなく消えてしまった。
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