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美琴が拠点に到着した時、少年は既に支度を済ませていた。
その小柄な体には不釣り合いな黒いコートは、少年の全身を覆い隠していた。闇の塊のような印象を感じさせるその少年には相変わらず感情が見えなかった。
「…………行くぞ。」
少年はただ頷く。ただ殺す為だけに生きる少年の姿は、美琴に絶望をもたらす。
それでも美琴は止まらない。例え罪を重ねる事になろうと、美琴はその歩みを止めようとはしない。
今宵、少年は殺戮に溺れる。
美琴はただ、それを見届ける。
美琴は思う。もしいつか閻魔の裁きを受けるのだとしたら、きっと地獄すら生ぬるいのだろう、と……
それでも、美琴は願う。それでも、この少年には幸せを与えてやりたい、と……
日は沈み、夜が来る。
闇に生きる暗殺者達の時間がやってくる。
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