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ある屋敷の中でヤクザ同士の抗争が起きていた。その様子を六藤鈴鹿は遠くから双眼鏡で眺めていた。
殺し合うヤクザを見ても鈴鹿は特に何の感想も抱かない。自分達が情報操作した結果に起きた抗争でも、鈴鹿には大した感想を抱かせない。
そんな中で携帯電話が着信を告げる。鈴鹿は少し気怠そうな表情を浮かべながら通話ボタンを押す。
「何か用?」
『何か用じゃないよ鈴鹿、君は今回の仕事をキチンと理解しているのかい?』
「黙れ。」
電話の相手は鈴鹿の保護者である六藤学であった。だが鈴鹿はあまり相手にしようとしなかった。
鈴鹿は基本的に他の暗殺者達を好きになれない。自分の保護者である学にも嫌悪感を抱いているし、自分自身すらも嫌っているのだ。
全てを嫌っているような姿勢の鈴鹿だが、例外も存在する。それが彼女が今双眼鏡で覗いている少年だった。
名を持たず、故に名無しと呼ばれた少年。その少年だけが、鈴鹿のお気に入りであった。
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