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男はふと思い出した。ちょっとした、笑い話としか思えない都市伝説だった。
政府は極秘で暗殺者を育てている。赤ん坊の頃から純粋培養で育て、殺す事に抵抗を感じない完全な暗殺者を作り上げる。その為に中には幼い子供の暗殺者もいる。
馬鹿馬鹿しい都市伝説だと、最初は男も笑っていた。
だが、目の前にソレはいた。幼い少年、殺す事に何の抵抗も感じない少年。ナイフを握った手の反対の手に持っているバック、それは取引の為に用意した金が入ったバックだった。
そう、少年はこの取引を潰す為に来たのだと、男は理解した。
「ま、待て!!た、助けてくれ……頼む、いや、お願いします!!」
男は躊躇いなく土下座した。最早命乞いしか生き延びる道が無いと悟ったのだ。
「お願いします!!もうこんな事はせず、真面目に働きますから、靴でも何でも舐めますからぁ!!」
最早プライドは無かった。ただ必死に情けを乞う。それに対し少年は無言だった。
男が恐る恐る顔を上げる。その目に映ったのは、無言で拳銃を向ける少年の姿。
それが、男の人生で最後に見たモノだ。
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