1 暗殺者達

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「………………」 倉庫を出た少年を出迎えたのは、浴衣姿の女性だった。 満月の光に照らされたその女性の姿は何処か幻想的にすら見えた。だがその足元には無数の死体が転がっている。 取引相手、そのなれの果てだった。 「終わったか?」 女性の問いに少年は頷く。手にしたバッグを女性に渡し、少年は指示を待つ。 そんな少年に構わず、女性は胸元から取り出した携帯電話で誰かと連絡を取る。 「……私だ。こちらの仕事は終わった。後は任せる……あぁ、分かった。」 女性は通話を終わらせて歩き出した。その後を少年が追う。 やがて二人はある集団とすれ違う。複数の集団はチグハグな面子で、ただ服装だけは清掃員のような恰好で統一されていた。 彼らは目を合わせず、ただ無言ですれ違った……いや、一人だけ少年を見ている者がいた。 それは少年より幾らか背の高い、それでも世間では少年と呼ばれる歳の者だった。 だが、それだけ。 何の言葉も交わされず、彼らは離れていった。
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