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倉庫から少し離れた場所に駐車していたバンに二人が乗り込む。
すぐさまエンジンを動かし、そのまま走らせる。軽快な音楽を流すラジオ番組の音が車内に響く。
だが、二人は特に反応しない。少年はただ前を見ているだけ、女性は運転しているだけだった。
実は女性は音楽に合わせて心の中で歌を口ずさんでいたが、それが表にでる事は無かった。
不意に、女性の携帯電話が鳴る。女性は眉間に皺を寄せながら携帯電話を少年に渡した。
少年は無言で通話ボタンを押し、さらにハンズフリー状態にした。すぐさま声が聞こえてきた。
『ちょっと美琴、聞こえる!?』
「……何の用だ?」
『何の用だ、じゃないでしょ!!今夜は飲みに行くって言ったじゃない!!じゃないじゃない!!』
「仕事だ。」
『またぁ?アンタねぇ私達まだ二十代よ?まだ女盛りよ?それが仕事漬けの毎日で不満ないの!?』
「…………無い。」
『……間があった。今間があった!!やっぱり美琴も不満あるんじゃん!!』
美琴と呼ばれた女性の眉間の皺が深くなった。
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