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「ねぇ、サナエ」
「何?ヒロ」
「何で、愛って見えないんだろうな」
2人、並んで歩く。
同じ道を。
「さぁ。つーか、そんなこと考えてたの?」
「だってさ、愛が見えたら、すれ違いがなくなるし、一番愛する人と結ばれるかもしれないし」
「でも、それって浮気も、心が離れていくことも分かっちゃうんじゃない?」
「確かに……。でも、今だけでもそうなればいいなって、ちょっと思った」
冷たい風が、頬に触れる。
白い息は、宙に溶けて消えた。
「別に変わらないよ。どっちでも」
「いや、変わるよ」
マフラーが、フワリと揺れる。
街は、音と光を失っていた。
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