秤(はかり)

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「無理だって。そんなんで変わるなら、見えなくても変えられるはずでしょ?」  女は、道の先を見ていた。  男は、視界を閉ざした。 「そうかもしれない」 「でも、あなたの愛が見えたら、重いのかな?軽いのかな?」 「たぶん、重いよ」 「そ」  雲が、月を隠す。  暗くなった道を、また歩き出す。 「一度は、重さつり合ったのにな」 「つり合うわけないじゃん」 「そうか……」  ゆっくりと、月の明かりが戻る。  女は、足を止める。  男は、女の顔を見た。 「私達じゃなくても、人は同じにならないよ。  全てが違うんだもん。  一瞬同じでも、つり合うなんて有り得ない」 「そうかもな」 「同じじゃないなら、いつまでも片思いなのかな?」 「片思い……か」 「そ。想い合う片思い」 「そう言うと、少しは聞こえいいな」  男は、瞼を開く。  女の背中が見えた。
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