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「なぁ、俺の片思いはどうなるんだよ」
「さぁね。ま、どうせ片思いだよ」
女は、振り向かない。
その視界に、男はいない。
足音のリズムが、変わる。
そして、2人の足音は止まった。
「なぁ。少し、このままいさせて」
「……」
「何でか分からないけど、涙出ないな」
「そう」
「何もかも違ったままだったな」
「色も違ったのかもね」
「そうかもな」
男の手に、一雫の涙が落ちる。
「バイバイ」
男の腕を、ゆっくりとほどく。
「バイバイ」
男は、小さくなる背中を眺めていた。
女は、あの場所から離れれるほど、重みを増すのに気づいた。
離れるほど。
離れるほど。
あの日の中心から。
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