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異常な日常
『もう君はリーダーなんだからちゃんと彼女にガツンと言ってやんなきゃダメだよ』
怒っている。 コイツ課長という権限をフル活用して理不尽なことばかりを言う。
俺がなにも言い返さないのを良いことに。
『なぁ。分かったか。お前はリーダーなんだから』
彼女が何もかも出来ないのは当たり前だ。
病気なのである。
モヤモヤ病といって思考がうまく働かないという。一週間前に言ったことに新鮮なリアクションをされるとさすがにまいる。
『空野さん。ちょっといいですか』
『はい?』
こんなかわいい子に酷なことを言うのは気が引ける。
『あのー。利用者と仲良く話してるのは良いんだけどさ。』
『はい』
『オムツの当て方がぐちゃぐちゃだって利用者の家族からクレームきちゃってさ』
『はい』
『山本さんのオムツ交換したの空野さんだよね』
『んー。そうでしたっけ?』
『ほら。メモ見てみたら』
メモ。
彼女の極度な物忘れにリーダーの俺から提案したメモ取りノート。
言われたら書く。
忘れたら見る。
彼女に言ったことだ。
『え~っと。山田さんでしたっけ』
『山本さん』
『すいません。…え~っと。山本さん。山本さん。…あ!私です。』
『ほらまだ慣れないのは仕方ないけどあそこの家族ウルサいからさ。時間かかってもいいから今度からは丁寧にやって欲しいんだ』
『…はい』
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