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少しだけ錆びた音を立てながら、扉が開く。
ここはビルの4階。
見慣れたダイニングキッチン。
そこに置かれたダイニングテーブル。
金属製の扉が、音を立てて閉まった。
私はテーブルとセットで揃えた椅子に鞄を置くとネクタイを緩めた。
ふとテーブルの上を見ると、小さくて茶色無地のダンボール箱が置いてある。
小さいとは言っても、一抱え程度の大きさだ。
私はこの箱に見覚えが無い。
近くに住んでいる親が置いていったものだろうか?
部屋に入ってきた時には気付かなかったが……
この大きさの箱に気付かなかったとは、疲れが溜まっているのかもしれない。
中身はいったいなんだろうか?
私は箱を手元に引き寄せ、蓋を開ける。特にガムテープでとめられているとか、そういうことはなかったので、それは簡単に開いてしまった。
そこにはナニカが詰まっていた。
何かよくわからないナニカだった。
ただとても不吉だということはわかったので、部屋に置いておくこと、まして同じ部屋の中でそのまま一夜を明かすなんてことはしたくなかった。
私はナニカが詰まった箱の蓋を閉め、両手で抱えて今しがた入ってきたドアを少し行儀が悪い開け方をして、部屋の外(と言っても窓すらない、薄暗い階段があるだけだ)へ出た。
階段を下り3階へ行くと、私の部屋の真下にあたる部屋へ、ノックもせずに上がりこんだ。
ここに住んでいるのは、ナニカに近いダレカなので、問題は無い。
この不吉な部屋には、私の部屋と同じ間取りのダイニングキッチンに、同じデザインのダイニングテーブルが置いてあり、同じデザインの椅子が揃っている。
おそらく奥の部屋も。
薄ら寒い嫌悪感が私を襲う。
ナニカが詰まった箱を私の部屋にあったのと同じ場所に置くと、一目散に3階の部屋を出る。
上る度にカチカチ音がする無機質な共用階段を上り、自分の部屋へと帰る。
テーブルの上には、もうナニモ乗っていない。
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