【一章】

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 太陽の光を集めるかのように天井の中心は硝子張りになっていて、大理石で作られた階段には真っ赤な絨毯が引かれていた。 フリンの先を歩くアルテミスの服装は王室つきにしては薄い。 甲冑を着るわけでもなく、むしろ、ドレスのよう。 神王の言いつけなのか、趣味なのかそれを着こなす姿に少しだけ目を奪われてしまった。 「何故、貴方は王室に入られなかったのですか?」 「えっ?」 「私と貴方の目的は一緒だったはずです。平和と安泰な暮らしを望んでいたではありませんか。それなのに何故、自らを危険な目に」  階段の途中、足を止めたと思うと振り返ってくれて。 ふわりとドレスと髪が舞い、アルテミスはフリンを見つめ立てた。 「俺は選ばれなかっただけ。アルテミスは選ばれた。それだけじゃないか?」 「それでも……、私は貴方を案じています。貴方の伝説を聞く度、貴方の負担が増える。今回もそう……。神王様の信頼を得た故に、貴方はまた危険な道を行かねばなりません」  口調は変わっても、優しさは変わっていなかった。 王室ならではの躾に苦労したであろう。 それでも、心だけは変わってないことにフリンは安心したのだった。 「俺は大丈夫。よかった、君は何も変わっていない」  仮面の下でどんな表情をしているかわからないが、目を見開いているのはわかる。 すぐ、目を細めると首元から何かは外したのだった。 「申し訳ありません。無駄な話をしてしまって。これを……、良ければ付けていって下さい」  少し歩み寄ると、ペンダントを差し出される。 フリンがそれを受け取るのを見ると、また踵を返し、歩みを進め出した。 「ありがとう」  立場は違えど、エデンを訪れた日と変わらないやり取りが出来た気がした。 その細い体にあまりに重い負担がかからないことを祈りながら神王の待つ部屋まで向かって行ったのだった。
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