【一章】

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 城を抜けると、アテナとエロスが待つであろう店に向かう。 エデンの街にあって、飲食店事態はたくさんある。 しかし、中でもアテナ御用達の店が三人の集まる場所になっていたのだ。 煉瓦道を早足で歩く。 エロスは時間に疎いが、アテナは全てにおいて厳しくある。 神王とその妻であるヘラの教育のせいなのか、若いくせに頑固なのだ。 しばらく歩くと、小さな路地に入る。 その突き当たりがいつもの店だった。 ドアを開けると、ベルが鳴り、マスターが「いらっしゃい」と声をかける。 周りを見渡し、マスターに目を向けると視線で位置を教えてくれた。 「待たせたな」  入り口から一番遠い席で食事をとるアテナとエロス。  アテナは上品に食べているが、エロスは肘を付きながらフリンに手を振っていた。 少しアテナの雰囲気が悪く、空気が重い。 エロスの隣にフリンが腰をかけると同時に、アテナはフリンを睨みつけた。 「遅い、レディを待たせるとはいい度胸だな」 「悪かった、神王様と話が長引いてな」 「で、内容は?」 「それは言う必要がないだろう?」 「ある。私も連れてけ」  女の子なのに勝ち気過ぎるのが傷。 エデンの隊長でありながら、単騎で敵陣に突っ込んでいく話は有名な話だった。 「テナちゃんは寂しいんだよ。クーちゃんがいないといっつも悲しそうな顔するし」  エロスの言葉を遮るようにテーブルを叩くと今度はエロスを睨みつける。 エロスは肩をすくめると、フリンにどうにかしろというような素振りを見せた。 「お前がエデンにいなかったら、敵襲に対応出来ないだろう。隊長という立場を忘れるな」 「私は隊長である前に騎士だという誇りがある。フリンが行けて、私が行けないわけがない。違うか?」 「だからだろう。お前に神王様はエデンを守るように言っているのさ、口にはしないがな」  目を見開くと、小さく頷くアテナ。 その後は嬉しそうに食事をとり、楽しそうに大会の優勝自慢を話していた。 それをフリンとエロスが黙って聞いて、誉めて上げるのもある意味恒例になってしまっていた。
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