【一章】

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 笛の音や花火が鳴る中、大きな歓声が上がる。 フリンとエロスは適当な椅子に腰をかけるとステージに視線を向けた。 そこには、ヘラクレスとアテナの姿があり、お互い様子を見るような形を取る。 しかし、アテナは胸の位置で腕を組み、出方を待つというよりは退屈そうだった。 「テナちゃん、余裕だね?」 「あれはアイツなりの様子見だ」 「あっ!」  中央に位置取るアテナの周りを回っていたヘラクレスが向かって行こうとした。 しかし、ヘラクレスは足を数歩動かしただけで固まってしまう。 相変わらず、胸で腕を組んだままのアテナはおもむろに腰に携えたナイフを持つとヘラクレスの首元まで掲げた。 「ヘラクレスでさえ、テナちゃんに勝てないんだ?」 「生身では勝てないさ。まぁ、ヘラクレスもわかっていてやったんだろ。だが、アテナの体質も異様だな」  もう、誰しもアテナの勝ちを確信したように拍手喝采が起きていたが、フリンは二人の動きに目を向け、闘いが終わっていないことを悟る。 何故なら、僅かに地面が揺れ始めたからだった。
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