【一章】

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「よかったの? 今日は楽園祭だったのに」 「いいさ、俺が見たところであいつは喜ばないだろ?」 「喜ばないけど、見てないと怒られるよ」  エロスと隣り合い、他愛のないことを話して歩く。  今日、忙しい理由は祭にあった。 『楽園祭』。 王国兵によるパレードが行われ、ダンスや武道大会、美人コンテストなんかが催されている。 王国兵たるもの、本来なら参加してなければいけないことだが、フリンもエロスもお構い無しだった。 「今回のミスエデンは誰だろうね」 「あいつ以外にはいまい。それだけの努力を惜しまないからな」 「そうだね、今回もかなり気合い入ってたから大丈夫だよ。それより、クーちゃんも参加すればよかったのに。美人コンテスト」  エロスがフリンを『ちゃん』付けで呼ぶ理由。 それは、フリンの体質にあった。 月に一度から二度に渡り、『女体化』してしまうのだ。 この世界には、魔法が存在する。 しかし、その魔法というのは女性しか扱うことしか出来ない。 女性の体内にしかない魔法宮というもの。 女性は得てして腕力が男性に劣ってしまうため、自分の身を守るものがない女性は魔法宮にエネルギーを持ち、それを自在に操ることで身を守ることが出来るのだ。 フリンは特異な体質故、男性にして魔法宮を体内に持っている。 但し、魔法宮はあくまで女性にしか使えないため、フリンの意思とは関係なく、魔法宮がエネルギーを貯蓄するべく体を女性にしてしまうのだった。 「クーちゃんが女の子になると可愛いからね~」 「うるさい……。あれは仕方ないことなんだ」 「あれって、発作みたいに来るんだね! 訓練中にクーちゃんが女の子になったときは笑ったよっ!」  思い出し笑いをするエロスにはわからない悩み。 『女体化』はいつ起こるわからないし、治るかもわからない。 エロスが言うように、訓練中に起こるときだってあるぐらい。 朝起きたら女の子になっているなど、ざらだった。
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