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「優勝おめでとう」
「おめでとうじゃない。何故、見に来なかった? 探したじゃないか」
「わざわざ俺を? 彼氏がいるにも関わらず」
「何の話だ。大体、私はお前に見せたかったわけではない。だが、見に来なかったのは許せん。もちろん、エロス。お前もだ」
太陽の光のように明るい金色の髪と気の強そうな少しつり上がった目付き。
翠色の瞳は美しく、華奢な体つきなのに、その頼もしさは彼女の気質からだろう。
フリンはその鋭い睨みに耐え兼ね、侘びの代わりに頭を軽く下げて見せた。
「今日もテナちゃん可愛いね!」
「当たり前だ。しかし、今回のテーマはクールビューティーなのだが、どうだろう?」
フリンとエロスから少し離れると、華麗に回って見せる。
ただ、それだけで観客から声援を一手に受けていた。
「綺麗だよ。アテナ」
「当たり前だと言っている。私を誰だと思っている。ところでクフリンよ、お前は武道大会に参加するのだろうな? 私と同等に闘えるのはお前しかいないぞ」
頬に笑みを乗せながら楽しそうに話すアテナ。
可憐な笑みとは裏腹に、各隊長も目を置くほどの武術の持ち主なのだ。
女性は力で劣ると思われていたのを払拭したのは、紛れもなくアテナだった。
しかし、その理由を知っているのはフリンだけ。
フリン自身もアテナが回りに偏見を持たれないように秘密を貫き通していた。
アテナはアテナ。
今を生きている。
それだけでいいとフリンは思っていた。
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