【一章】

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「身に覚えがあるのか? 父上に呼ばれるような理由が」 「クーちゃんがテナちゃんに手を出したからじゃないの?」 「エロス、私とクフリンは」 「恐らく、討伐依頼だろう。最近、隣の村の抜け道で何やら事件が起きてな。その抜け道というのが深い森を挟むのだが、大きな怪物が出るらしい」  下らない話をするアテナとエロスの会話を遮ると事情を説明する。 エロスは頷きながら聞いているのに対し、アテナは眉間に皺を寄せ、フリンを睨みつけるのだった。 「何故、私に依頼しなかったのだろう?」  苛々したように片足で地面を叩く。  フリンだけを頼ったのが気に食わなかったのか視線を外すことはなかった。 フリンはそんなアテナをあやすように、肩を叩き、目線を合わせるように屈む。 神王の娘にあたるアテナ。 それだけで神王がアテナに依頼しない理由はわかる。 娘を危険な目に合わせたくない父の心がアテナにはわからないようだった。 「神王の気持ち、本当はわかっているのだろう? アテナはいずれ、エデンの新たなる王になるかもしれない。だからこそ、危険な目には合わせたくないのだ」 「バカ言えっ! クフリンは私が弱いと言うのか?! 他の隊長より劣っていると言うのか?!」  フリンの手を振り払うと怒りを露にするアテナ。 眉間に深い皺を刻み、短く纏めた髪を逆立てる。 フリンはため息一つ、背に背負った槍を抜く。 そして、その槍を勢いよく地面に突き立ててアテナを睨みつけた。
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