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それから何時間経っただろうか…。
父親は椅子に座ったり、立ち上がってはウロウロしたりと忙(セワ)しなく、母親は椅子に座りながら手を顔の前で組み、ひたすらに息子の無事を祈っていた。
夕方にここに運ばれ、時刻は11時を回っている。
約5時間という時間がこの夫婦にはとてつもなく長く感じたことだろう。
ブゥゥン…という音とともに集中治療室の赤いランプが消えた。
父親は扉が開くのを待ち構え、母親は組んでいた手を外し、立ち上がった。
扉が開き、ガラガラという音を響かせ、ストレッチャーが出てきた。
その上には静かに息をたてて眠っている男の子がいた。
夫婦はお互いに安堵の息をもらし、母親は力が抜けたように床にしゃがんでしまった。
「…よかっ……た。……よかったよ…」
父親も涙混じりの声を出して、息子の無事を祝っていた。
そんな2人の横をストレッチャーは通りすぎ、男の子を病室へと運んでいった。
一足遅れて医師が出てきた。
「先生…。本当にありがとうございました…」
夫婦共々頭を下げ、お礼の言葉を並べていた。
「手術は無事に終わりました。しかし、多少の問題が…」
その口から聞かされた言葉は決して軽いものではなかった。
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