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12月。マレーシアから一人の女の子が帰国してきた。
―長谷川 海。
私のクラス、三組だ。
その子とはすぐに仲良くなった。
そして、ある日入る部活が決まっていなかった海に私はこう言った。
「剣道部入らない?」
とりあえず、(半ば強制的に)見学へ連れていくことにした。
「海っ、こっちだよ~」
「へぇ―!何これ、え?竹刀?」
少し興味がわいたようだった。
しばらく仮入部期間となった。
海と私は、一緒に登下校するようになった。
そして…、
毎日のように、帰り道阿部と会い、結果一緒に帰ることになっていた。
少し明るい時はお話したりもした。
ふざけて枯れ葉をかけあったりしていた。
「ね―ね―あべぇ~?」
前を歩く阿部に声をかける。
「?なに――…」
バッ!!
「ぅわぁっ」
阿部が振り向いた瞬間、私と海で一斉に枯れ葉をぶっかける。
「くっそ~~っ」
阿部も負けずと葉を必死で集め投げてくる。
そんなやりとりが、私は嬉しかったりする。
阿部が笑うとこっちも勝手ににやけてしまう。
それが、恋だ…。
私は本気で阿部が好きなんだ
そうやって、思ってた。
…確かに、恋した気持ちは本物だった。
この後も、その恋心のせいで悩みをつくってしまったりもする。
でもこの時の私は、本気で恋をするということの大変さや大きさ、また自分が恋愛オンチだということにも気づいていない。
ー付き合うだとか、そんな言葉も自分にはまだまだ無縁だと思ってた。
とにかく、近いうち自分に阿部以外での彼氏ができ
その人を思うあまり自分がどれだけ傷つき、悩むことになるかなんて……
…全く知りもしない。
…知るはずがない。
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