*存在*

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私は歌いきった脱力感とまだ残る緊張感でいっぱいいっぱいだった。 「あっ、」 先輩だ。 やっぱ上手いな。予想通り。 全員上手だ~、凄い! …終わった。 パチパチパチパチ 私も頑張って拍手する。 ん?次は男子たち? 「~~♪」 あは、アイツの声下手、アイツも。 ちょっと、綺麗な声の邪魔になるから歌わないでよ~。 …………。 …………。 …………え……? キレーナコエ?? え?え…えぇ… ななな、七星ぇ???!!!! ちょちょちょちょっと待っ…!! 上手すぎない?! その声の持ち主に興奮する。 バッと後ろに振り向くと、私同様みんなもあんぐり…。 「…すごい」 気付いたら、口に出していた。 優しくて、でもしっかりしてて、 …一人じめしたくなるような―… …ハッ! 気付いたら曲が終わっていた。 もの凄い音量の拍手と歓声に包まれ、照れながら、でも誇らしげに微笑む七星がいる。 その後、いろんな人が歌ったがあまり耳に入らない。 七星の声だけが、しっかりと耳に染み付いていた―…。 いつもいじられキャラの、言っちゃ悪いけどあまり冴えない七星。 でも、私が大好きなこと…、剣道と歌の舞台で輝いた七星は、私にとっては充分と言えるほど、いやそれ以上に輝いていた。 今までと、君への気持ちがちょっと変わった…ううん。 大きく変わったあの日。 もっと…、もっと仲良くなりたい、―近づきたい。 そう思い始めた。 夜、私はベットで横になった。 …はあ。 疲れた。 てか、七星上手だったな~… 七星は歌好きなのかな? 七星って好きな歌手いるかな~? 七星は…… ごく自然にその名前ばかり頭に描いていたが、全くそれに気付かない私だった…。 また聴きたいなぁ。 昼に聴いた七星の歌声を思い出しながら、眠りについた。
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