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―――ヨウは地に足が着く感触を覚えた。久しぶりの感覚だ。ルシフェルに「目を開けていいよ」と言われ、まぶたを上げる。
「ようこそ、"高いところ"へ」
いつの間にか翼が二枚だけになっていたルシフェルが、ヨウの隣でにっこり笑っていた。
二人はまっすぐ続く綺麗に舗装されたコンクリートの道の真ん中に立っていた。その道の両側には真っ白な雲が満ちている。うっかり踏み外したら雲を突っ切ってどこまでも落ちていきそうだった。道は先へ進むと高い階段となり、その果ては不思議と靄がかかって見えなかった。
「……俺の天国のイメージにそっくりだよ。道がコンクリートって以外は」
神話的な風景に見とれながらヨウが言うと、
「前は大理石とか金とかだったんだけどね。コンクリートが一番歩きやすかったから。それにほら、私みたいに裸足だと大理石は冷たすぎるでしょ?」
本当なのかどうか分からないことをルシフェルが答えた。
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