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「さっ、ヨウくん、行こうか! あの階段の先でミカエルが待ってるよ」
「えっ、あれ登るのか? 足で?」
ヨウは驚いてルシフェルを仰ぎ見るが、彼は「チッチッ」と舌を鳴らしながら人差し指を口の前で振った。
「私の翼で運んでもらえるとでも思ったのかい? 甘い、甘いよヨウくん! カルピス原液に練乳混ぜるくらい甘い! いくらさっきまで洗濯機の中にいたみたいに回されてたからって、甘えちゃいけないよ! 人間は自分の足で歩かなきゃ意味無いんだよ!」
「熱い。松岡修造くらい熱い。そして暑苦しい。使えるものは使っとけ。甘えてなんぼだ。宇多田ヒカルもそう言ってた」
「そんな宇多田ヒカルも自信の無さに甘えずに内なるパッセージに従って自分の足で歩き始めたんだ、ヨウ君も歩きなさい?」
「む………」
天使のくせになんでこんな話題について来れるんだ、といぶかしみながらも、ルシフェルの言ってることは確かなのでヨウは渋々歩き始めた。それをルシフェルがにこにこしながら追従する。
階段の一段目にさしかかり、ヨウは階段の先を見つめた。50段くらいから上は靄がかかっていてやはり見えない。
「ハァ。どこまで続くんだよ、これ。先が見えん」
「恐れることはない。遠いものは大きく、近いものは小さく見えるだけのことだ!」
「バロン男爵乙」
ふざけるルシフェルを一蹴して、ヨウは階段を登り始めた。
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