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「なあルシフェル。さっき靄の話をしたとき、『この仕掛けを作った天使』って言ったよな? もしかしてこの階段とかあのアーチとかも、お前らが作ったのか?」
ヨウは空を見上げたまま尋ねた。そのまま階段を登って、三段ほどでつまづいた。その体をルシフェルが片腕で支える。
「前見て歩いてよヨウくん! 危ないなあ。
"高いところ"のものはほとんどすべて、天使が作ったものだよ。階段もアーチも、靄もね」
「すまん。じゃあ、もしかして、あの空もお前らのか?」
ヨウが空を指差し、つられてルシフェルも上を仰ぐ。
「そうだよ。誰が作ったかは知らないけど。よく分かったね?」
感心したようにルシフェルが言い、ヨウは「まあな」と返す。
「まるで小学生が適当に塗りたくったみたいな空だからな。下手すぎ」
上から目線の厳しい批評に、ルシフェルは少し目を丸くしてから、声をあげて笑った。
「あっはっは! いやー、言われてみればそうかもね! 私たちはみんな、雲一つ無い青空が当然一番美しいものだと思ってたけど、確かに不自然で不細工だよね。うーん、やっぱり人間の感性って面白い」
ルシフェルが感心しきるので、ヨウはなんだかこそばゆい気分になった。それを誤魔化すように、続けて質問をぶつける。
「空も作れるってことは、なんかそういう便利な魔法があるんだろ? 窓の鍵を開けたときみたいなさ」
「んー、魔法っていうか……"ピュシス"って力なんだけど、まあ、これから分かるよ」
ルシフェルはまたすべて言い切らず、意味ありげに笑った。そしてフッと視線をヨウから外す。それにつられてヨウも顔を前に向けると、もう階段は終わり、目の前にはアーチがあった。
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