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「はて、ここでいいんだっけ?」
手元の地図を見る。多分合っているのだろうが、目の前にはセピアの巨大な建物が立っていた。
首を傾げながら呟けば、明朗な返答があった。
「良いも何も、ここは私の家ですが……」
困り果てたように後ろに立っているシルクハットの男を、加容子は睨みつけた。
初対面で失礼であるとか、別に睨む必要はないとか、彼女には関係ない。
「結婚してください」
いきなり突き付けられた、ピンクの紙にに金字で文字が印字された結婚手続き用紙に、彼は口をパクパクさせた。
彼女はそれを見て、口の端を上げた。
――付け込みやすそうな男だ!
まさに求めていたのは彼、とばかりにまくし立てる。
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