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「赤嶺加容子。家事、特に料理は得意です。まだ18で若くてピチピチですよっ! こんな私ですが、よろしくお願いします」
「え、あ、はっ!?」
加容子は彼ににこりと笑ってトドメを差した。
「今、はい!って言いましたね。わあ、嬉しいなあ! これで追い出されたら、結婚詐欺に合ったって言いふらしてやる」
彼はわたわたして、加えて半泣きだ。
加容子より十歳近く上に見えるのだが、言動や行動はまだ十代の思春期の青年のようだ。
何が起こっているのか、彼の頭の中ではまだ把握できていないに違いない。
加容子は少し残念な目で彼を見やった。
表の通りを歩いてきたところ、彼の格好は少し特殊だと気づいた。
灰色のシルクハットに、灰色の外套。中に来ているのは薄紫色のシャツに、多分黒いスーツ。服の端がよれよれで、髪の毛も良く言えば無造作ヘヤー、悪く言えばボサボサ。
丸い眼鏡は度が結構強そうで。
一見すると真摯に見えなくもないのだが、良く見ると面倒くさがりの独身青年だった。
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