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「と、とりあえず中へどうぞ……」
客は客間へという基本原則を思い出したらしい彼は、怪しいが自分より弱くて少女である加容子を部屋に入れる気になったようだ。
これでだいたい成功したなあ。
こんな寒い中、上着も着ずに来たかいがあったと、加容子は手に息を吐きながら、人の良さそうな青年の家に入った。
中は結構広かった。元々、裕福そうな家を目的に来たのだから当たり前といえばそうなのだが、加容子が修学旅行でしか見たことのない内装をしている。
そんな家の中をまじまじと見ている加容子を、青年は見ていた。
「シルクハット、脱がないの?」
「え、ええ……。そうですね」
ほんのり顔を赤らめている様が、落ち着かない。
変な趣味のない人だといいんだけど……。
「紅茶で平気ですか?」
「淹れられるの?」
「まあ、そこそこ好きなので」
どうやら、お手伝いさんらしき人物は雇っていないらしい。
これも事前に調べたとおりだと、加容子は安堵した。
「その椅子に座って、待っていてください」
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