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「貴方は、どうして――」
「え?」
首を振った彼は、奥へとまた引っ込んで行ってしまったようだ。
お湯を沸かしていたんだろうか。
少し待つと、ティーポットとカップと砂糖の瓶が乗ったお盆を持ってきてくれた。
「お腹も空いているようですね」
そんなそぶりを見せた覚えもないのに、と疑問に思いつつ、加容子は首を上下に振った。
すると、また奥へ行って、クッキーらしき焼き菓子の乗ったお盆を運んできてくれた。
「では、お話を始めましょうか」
「うん」
「ああ、食べながらで構いませんよ」
「……うん」
そんなに物欲しそうに見ていただろうか?
加容子は恥ずかしく思いながら、クッキーらしき物体を口元へ運んだ。
サクサクとした焼き菓子は、やはりクッキーだった。ただ、独特の風味があって、それがなんなのかはよく分からない。薄荷のような味だ。
「ありがとう。美味しい、です」
紅茶も啜りながら、彼を見ると、ふんわりと笑っていた。
「それは良かった。きっと喜びます」
「え、貴方が?」
「あ、いや、それは……そうですね。僕もとても嬉しく思います」
なんだそれは。
じとっと見れば、彼はあたふたしながら、話を切り替えた。
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