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授業中の誰もいない廊下
ペタンっと座った
っていうか、倒れこんだ
蒸し暑い空気が少しだけヒンヤリする
眼鏡を指で触る
指紋がついたのか、視界がホントにちょっと霞んだ
心臓が波打つ
何かのスイッチが、あたしの中で入った気がした
あのね?
立花さん
あたしね
あたしね
嬉しかったの
性格悪いなぁって思うけど
ものすごーーく思うけど
仮にも好きな人相手におかしいだろって思うけど
嬉しかったの
立花さんが、中村君を跳ね退けてくれて
『誰?』なんて言って
相手にしないでいてくれて
あの時の、あたしの気持ちが分かったかぁ!!なんて
ざまぁみろ!!なんて、ちょっと思った
嘘です
ちょっとどころじゃなく、かなり思いました
仮にも好きな人相手に
変だよね
でもね
だからね
だから
理由になってないのかもしれないけど
固まってしまった歪んだこの気持ちを
立花さんなら壊せる気がした
話した事もないのに
何にも知らないのに
立花さんにしたら、はた迷惑な話だけど
立花さんのキラキラに触れたくて
立花さんの見る世界に行きたくて
怖かったから
時間が解決してくれるなんて言葉、全然通用しないし
下手したら大学まで追いかけちゃいそうな自分がいて
これからおばあちゃんになって死ぬまで、あたしは自分が嫌いなの?って
ずーっと、ずっと
このままなの?って
怖かった
すごく、怖かった
立花さんの大きい目には
きっと不思議な力があるんだね
だって
あたし、変わりたいって思った
強くなりたい
隠れるのは、もう嫌
隠すのは、もっと嫌
気持ちに気付かないふりするのも
キラキラした世界に憧れて
憧れだけで終わるのも
もう嫌だから
このチャンスを逃がしたら
きっと、あたしは
一生このままだ
そんなのは嫌
絶対嫌
あたし
変わります
頑張って
変わります
傷つけられたら言いかえしたい
好きな人を、好きだと素直に言いたい
おしゃれして
眼鏡なしの世界で
ちょっとくらいキラキラしたい
重い体を上げて、立ち上がった
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