ほとんど100cm

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それからあたしは放課後に、図書室へ通うようになった …毎日じゃないけど 本当は毎日行きたいんだけど レズじゃないもん 本好きだし でも、嫌われたりしたら悲しいし 気持ち悪がられないペースで、少しずつ 離れた場所で 目が合うと、あたしの分厚い眼鏡の奥の小さい目をジィッと見る 探るみたいに 「それ、好きなの?」 突然、話し掛けられてビックリした… 声裏返ったし 前と同じ作者の本 「は、い」 あたしは会話を続けたくて、超ミニマムサイズの勇気を振り絞った 頑張れ自分!て 「な、中西鯉太…前から結構読んでて、それで…あの…あ」 どもったあたしがそんなにアホだったのか、立花さんが吹き出した ブッ、て ポカンとしちゃった あんまりその顔が幼くて、女の子らしくて(絶対言えるはずないけど) 「わるい……、何か変な感じがして」 クスクス笑う、立花さん 何が<変な感じ>なのか検討もつかなかったけど 浮かれます!浮かれますよそりゃ!! 「立花さん、は…本、すすす、好きなんです、か?」 どもったあたしの言葉が気に食わなかったのか、立花さんの眉にクッてシワが寄った 失敗した、と思った これじゃまるで立花さんに本が似合わないみたいじゃないっ!馬鹿!! 「あの、ちがっ…そ、そうではなく、ですね」 一人で空回るあたしなんて、目に入っていないみたいに立花さんはグルンっと本棚を見渡した 眉にシワを寄せたまま 「分かんない、けど…」 あ、これ この表情 そっか 怒ってるんじゃなくて 困ってるんだ 「ココ、落ち着くから」 つられるように、あたしもグルンっと本棚を見渡した 当たり前だけど、本に囲まれてる スッと息を吸い込むと、古い紙の臭いがした 人がいないのに、<人>の気配を感じるような異空間 「………なんか、分かる気がする」 ひゃっ! 勝手に出た、独り言を隠すみたいに口を両手でふさいだ 何を分かったような口を!! 「変なの」 ムッと口をへの字に曲げた ほんの少し、顔を背けて あぁ、これは 照れてるんだ この顔を見るのは2回目だもん すぐ分かる
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