ほとんど100cm

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あたしは地味で 可愛くないし 見るのも嫌になるくらいのブスでもない インパクトに負ける平凡さ 誰ともお付き合いした事もない 進路もまだ決まってなくて スカートも目立ち過ぎないくらいに長い 分厚くて、長い前髪に 超分厚い眼鏡をかけて キラキラした<そっちの世界>の人とは違ってた …何をもって<そっちの世界>なのかは分からないけど ジャージの上着を脱いだ立花さんの細い腕 真っ赤な鯉の入れ墨が半袖からチラリと覗く 間違いなく<そっちの世界>の人だ それもとびっきりの ここにいる人、全員の中で一番 すごく、神聖なものに思えた 決意の現れ、みたいな? 特別なキラキラ 『あんた、数えて』 立花さんは覚えてないと思うけど、指名されたのはあたしだったんです 『…1』 『…2』 『3』 白くて細い腕のどこにそんな力があるのか分からないけど、立花さんは北川先生の言う通り腕立て伏せをした 片腕で 『23』 『24』 『…25』 平気な顔で 目だけが、絶対に人に屈しないって強い意志で光ってた 『67』 『68』 『69』 ポタポタ額から鼻に向かって垂れる汗が、苦しくないわけじゃないって教えてくれてるみたいで あたしはあたしなりに大きな声で それでも人より全然小さな声で 頑張れ、頑張れって 数を数えた 一生懸命 『…100』 拍手がワッとあがった ドラマの1シーンみたいに 北川先生は、すごく悔しそうで あたしは あたしは脇役の脇役なのに、泣きそうになった っていうか、ちょっと泣いた キラキラした世界が塗しすぎて 横目にうつる、腰を抜かした格好のままの中村君はポカンとしてた ふふーんだ! キラキラなら立花さんが一番なんだから!! あなたなんかよりね!! <クラス1のモテ男>の中村君が、実は計算高い事をあたしは知ってた みんなは中村君が好きでも、あたしは苦手だったから 良い気味なんだ! (性格悪いですね…スミマセン) すごいよ!!立花さん!!! 教室に帰る前、ユナちゃんが立花さんにお礼を言おうと近寄って行くのが見えた 何て会話をしてたのか聞こえなかったけど 立花さんはムッと口をへの字に曲げて、頬を少しだけ染めた
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