ほとんど100cm

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見られている事に気付くと、立花さんは何かを伺うように目だけで教室を見渡した 獲物を探すみたいにも見えるし 牽制するみたいにも見える たったそれだけでほとんどの子が、何気ないふりをして輪から離れていった ほぼ間違いなく情けない顔をしていたあたしと目が合うと、強烈に眉をしかめた 強くて、綺麗な大きい目 立花さんのその顔を見て、中村君はチャンスだと思ったみたい 一歩、立花さんに近づいた 背の高い中村君と 背の低い立花さんが並ぶ 「立花さん、迷惑なら迷惑って言った方が良いよ」 良いことを教えてあげてるみたいな <クラス1のモテ男の中村君>にぴったりの優しい声 「付き纏われてるんでしょ?」 -ドンッ 1m先の壁に 中村君がぶつかる 鈍い音 立花さんの小さくて、白い右手が中村君の喉を掴んでいるのが見えた 縫い付けられたみたいに動かないのは 力のせいなのか 立花さんの空気がそうさせないのか たっぷり30秒 教室からは何の音もしなかったと思う 少しでも動いたら、鋭い空気で体が切れてしまいそうで ゆっくりと立花さんの手が離されると、中村君がグラリと揺れた 変に青くなった顔は、さっきまでの自信がある表情とは全然違ってた 抜け殻みたいに 背中を向けたままの立花さんが、顔だけで振り向く その目が 燃えてるみたいだった 教室からでていく 小さな背中 もつれる足で、追いかけた 自分の足じゃないみたいで 全然追いつけない いつも気になる 気にしてる人の目を、どうでも良いと思った さっきかいた冷や汗が、背中に張り付く 何でか分からないけど 今、行かなきゃ 今、追いかけなきゃ 2度と立花さんに近づけない気がしたから 言わなきゃって もう一度、言わなきゃ ちゃんと言わなきゃ 伝えなきゃ 昼休みの終わりのチャイムが鳴って、人がどんどん減っていく 蒸し暑い廊下 「……あのぉっ」 小さい背中に向かって声をかける 一生懸命出したつもりなのに、蝉の声に掻き消された もうやだ! 声震えてるし 「…た、ちばなさんっ」 今持ってる勇気を全部こめて、声を出した 涙声だった
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