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「あ、あの~」
「ぇ…」
しまった…。
自分の世界を飛びすぎた!
思わず大仰な程びくついてしまって相当恥ずかしい。
「だっ大丈夫ですか!?さっき目が白目でしたよ!?」
「うおおマジか、…うん。これ持病だから気にしないで。そうゆうことにしておいて」
「は、はあ…」
「っつーことで、俺帰るわ」
相手が薄い返事を返すのを鬱っぽく聞き届け、もう用は無いとばかりに勢いよく踵を返し、優雅(?)に歩きだす。
せめて、思い出の中でくらいは爽やかな俺でいてあげよう…。
俺は精一杯の爽やかオーラを振り撒いてもう会うことは無いだろう少年ににやっと微笑む。
あははちょっとうまく微笑み過ぎたかな?
「じゃあ、お元気で(ニヤーン」
―ガシリ
………あれ、なんで俺腕掴まれてんの
「…っ…ゃ、やっぱり俺、諦められません!」
「………」
ひどいやっ!
せっかくそれとなく話を切って爽やかに退場しようとしたのに……この人おバカさんなの?鬼畜なの?
まじ台なしだよどうしてくれるんだこのすっとこどっこい
「さっき言ったふうに付き合うって言っても、いきなりってゆー訳では無くて…ですね、後々そうなったらいいなぁ~…みたいなことで…」
「へい!男ならハッキリと仰い!」
「は、はい!つまりはですね、お試し期間を設けてくれませんか!?」
「お、ためし…?なんじゃそら」
なにやら恐ろしいこといっちょる気がするのは俺だけですかそうですか。
ようは「俺を一回試してみろよベイビー」っつーことなのですか?
「その期間中に出来るだけいろんな俺を知ってもらい、期間が過ぎて、それでも俺じゃあ無理って言うなら………その時は……潔く諦めます」
無謀な賭けに出た少年は強く、そりゃもー指先が白くなるくらい強く俺の手を握った。
ぶっちゃけどうでもいいけど、俺に対する思いが尋常じゃないってことだけは分かった。
だけどさぁ…
「なんでそこまですんの」
他人へ興味が湧くのって、久々かも…。
なんか不思議な感じだ。
こんなに暑苦しい奴、俺の周りには居なかった。
瞬きを一つして、ゆっくりと開いた少年の焦げ茶色の瞳が微かに揺らぐ。
「好きだから、です」
豪快で俺には勿体ないくらいの笑顔。
――不覚にも、それが綺麗だと思ってしまったのは、多分きっと頭のいかれた勘違いだろう。
「やっぱり、駄目ですか…?」
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